「トイレに行くたび、ついビデを押してしまう。むしろ使わないと落ち着かない」。清潔のためのつもりでも、毎回洗うことがデリケートゾーンにどう影響するのか、気になったことはありませんか。
実はビデ(温水洗浄便座の女性用洗浄)と膣の関係は、温水洗浄便座が広く使われている日本で何度か調べられてきました。研究の結果は「ふつうの使い方なら心配は少ない」というものと、「習慣的な使用は膣の常在菌の乱れと関係するかもしれない」というものに分かれています。使うこと自体は問題にせず、回数と強さを控えめにするのが、今わかっている範囲での現実的な付き合い方です。
この記事でわかること
- ビデで気にされる「膣の乳酸菌(ラクトバチルス)」のはたらき
- 日本で行われた4つの研究の数字と、そこから言えること・言えないこと
- デリケートゾーンにやさしいビデの使い方5つと、婦人科に相談したいサイン
ビデで気にされるのは「膣の乳酸菌」のバランス
健康な膣の中では、ラクトバチルスという乳酸菌の仲間が多くを占めています。乳酸をつくって膣内を弱酸性に保ち、ほかの菌がふえにくい状態を守ってくれる存在です。
ラクトバチルスが減り、別の菌が優勢になった状態を「細菌性腟症」といいます。おりものの量がふえる、生臭いにおいがするといった変化につながることがあります(くわしくは「ガードネレラ腟炎 〜細菌性腟症〜」で解説しています)。ビデについて心配されているのは、水流でこの乳酸菌が洗い流されたり、肛門のまわりの菌が前側へ運ばれたりしないか、という点です。
ビデと膣の関係を調べた日本の研究
ビデを習慣にしている人は乳酸菌が見つからない割合が高かった(2010年)
東京の病院で、おりものの増加を訴えて受診した妊娠していない女性268人を調べた研究です。膣の分泌物からラクトバチルスが検出されなかったのは、ビデを習慣的に使う人の42.86%に対し、使わない人では8.77%でした。便由来の菌が見つかった50人のうち46人はビデの使用者でした(Ogino et al., 2010)。ただし、もともと症状がある人だけを調べた研究なので、ビデが原因だと証明したものではありません。
妊婦さん1,293人では差が見られなかった(2013年)
東京で出産した女性を対象にしたアンケートと診療記録の調査では、回答者1,293人のうち63.3%がビデを使っていました。早産になった割合は使用者15.8%、非使用者16.0%でほぼ同じで、細菌性腟症の割合にも関連は見られませんでした。著者らは、通常の使い方であれば臨床的なリスクにはならないと結論づけています(Asakura et al., 2013)。
1年追跡すると細菌性膣炎の症状が出やすい傾向も(2017年)
インターネット調査会社のモニター7,637人(男女)を1年間追いかけた研究では、ビデを習慣的に使う女性で、細菌性膣炎の症状が新たに出るオッズが約2.7倍という結果でした。一方で、症状が出た人の数自体が少なかったため、研究チームは確かな結論にはさらなる研究が必要としています(Kiuchi et al., 2017)。
ノズルの衛生状態はおおむね保たれていた(2016年)
大学構内にある温水洗浄便座127台を調べた研究では、ノズルから大腸菌が検出されたのは約5%で、ノズルの自動洗浄機能はおおむね機能していると報告されています(Iyo et al., 2016)。

ビデを毎日使うのはよくない?研究からの読み解き
4つの研究をまとめると、「ビデを使えば病気になる」と言える根拠はありません。妊婦さんを対象にした比較的大きな調査では、差がみられなかったからです。
その一方で、症状のある人に使用者が多かった報告や、習慣的な使用と症状の出やすさの関連を示す報告もあります。どの研究も「習慣的に使っているかどうか」で分けているだけで、1日に何回、どのくらいの水圧で、何秒当てているかまではわかっていません。だからこそモアコスメでは、毎回の習慣にはせず、洗いたい日に軽く使うくらいをおすすめしています。
デリケートゾーンにやさしいビデの使い方5つ
以下は研究で効果が確かめられた方法ではなく、上の結果をふまえたモアコスメ編集部からの提案です。
- 使う日を選ぶ:生理中や汗をたくさんかいた日など、すっきりさせたいときに限定する
- 水勢は最弱から、数秒で止める:膣の中まで洗い流すイメージは持たない
- おしり洗浄と両方使うときはビデが先:肛門側の水が前へ回りこみにくい順番にする
- 拭き取りは前から後ろ、押さえるだけ:こすらずにペーパーで水気を吸わせる
- 自宅ではノズルのお手入れを:ノズル洗浄ボタンや取扱説明書のお手入れ方法を定期的に
洗ったあとの乾燥・つっぱりが気になるときは
洗う回数が多いと、外陰部の肌がカサついたり、つっぱりを感じたりすることがあります。乾燥しやすい季節のケアは「冬のデリケートゾーンの乾燥対策」でも紹介しています。毎日のうるおいケアには、デリケートゾーン用につくられたローションを取り入れるのもひとつの方法です。

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婦人科に相談したいサイン
- おりものが急にふえた、灰色っぽい・ポロポロしたおりものが出る
- 魚のような生臭いにおいが続いている
- かゆみやヒリヒリが数日たってもおさまらない
細菌性腟症やカンジダは、婦人科で日常的に相談される身近な不調です。においの変化については「デリケートゾーンのにおいが気になる…正常なにおいと注意したい変化」も参考にしてください。
よくある質問
Q. ビデはまったく使わないほうがいいですか?
A. いいえ。通常の使い方で差がなかったという研究もあり、使うこと自体を避ける必要はありません。生理中など、流したいときに弱めの水勢で短く使うのがおすすめです。
Q. 生理中はビデを使ってもいいですか?
A. 経血をさっと流したいときに使うのは自然な使い方です。その場合も水勢は弱く、時間は数秒にとどめ、拭き取りはこすらずに押さえるようにしましょう。
Q. 外出先のトイレのビデは不衛生ですか?
A. 大学構内の便座127台を調べた研究では、ノズルの自動洗浄はおおむね機能していたと報告されています。気になる場合は、使用前にノズル洗浄ボタンを押す、無理に使わないなど、自分が安心できる方法を選んでください。
まとめ
ビデは便利なアイテムで、使うことを我慢する必要はありません。ただ、膣は乳酸菌が守っている場所なので、「たくさん洗うほど清潔」とは限らないことは覚えておきたいところです。使う日を選び、水勢は弱く短く。乾燥が気になるときはうるおいを足す。そんな小さな見直しから始めてみてください。
参考資料:Ogino M, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2010;36(5):1071-4./Asakura K, et al. Obstet Gynecol. 2013;121(6):1187-94./Kiuchi T, et al. Prev Med Rep. 2017;6:121-5./Iyo T, et al. J Water Health. 2016;14(1):68-80.









